ペルソナとカスタマージャーニー 前編「ペルソナを設定する」

エクストーン ディレクターチームの藤川です。

前回はリニューアルの際に実施している「エクストーン流ヒューリスティック評価の進め方」についてご紹介しました。

今回および次回は、サービス設計プロセスの肝となる「ペルソナ設定とカスタマージャーニー」について基本的な流れを今一度整理してみたいと思います。

1. はじめに

私たちがサービスデザインをする際、ユーザーのニーズと期待を正確に理解し、それに応じた体験を提供することが重要です。 この過程で中核的な役割を果たすのが、「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」です。 ペルソナはターゲットユーザーの代表的な属性や行動パターンを具体的に描き出し、カスタマージャーニーはそのペルソナがサービスを利用する過程を可視化します。 これにより、サービス設計者はユーザーの課題を特定し、解決策を効果的に導き出すことができます。

世の中ではすでに数多くの記事で解説されている内容ですが、改めて基本を再確認しつつ、具体的なプロジェクト事例に沿っておさらいしていきたいと思います。

今回は「ペルソナの作成」にフォーカスを当ててご説明します。

2. ペルソナとターゲットの違い

サービスデザインにおいて「ペルソナ」と「ターゲット」はしばしば混同されがちですが、これらは異なる概念です。

ターゲット

ターゲットは、製品やサービスが向けられる特定の顧客セグメントを指します。これは主に市場の範囲を定義するために使用され、年齢層、性別、地域、所得レベルなどの統計的な情報を基にしています。

ペルソナ

一方でペルソナは、ターゲット市場内の理想的な顧客を人物化したものです。ペルソナはターゲット市場のデータに基づきつつも、より詳細な個人を具体化します。これには年齢、職業、趣味、生活様式、購買行動、価値観、ユーザーのニーズや課題など、製品やサービスの使用状況に影響を与える可能性のあるさまざまな要素が含まれます。

両者の違い

ターゲット市場が「誰に販売するか」を大まかに定義するのに対し、ペルソナは「その人たちが何を望み、どのように感じているか」を具体的に理解し、ユーザーの体験を中心に置いたより深いレベルでの考察を行います。

3. ペルソナの作成プロセス

ペルソナの作成については、ユーザー調査などに基づかず、チームメンバーで合意をはかりながら簡易なペルソナを推定で作り上げていく方法もあります。この場合は、先にペルソナを立て、その後のプロセスでその仮定が正しかったかを検証していくことになります。 今回ご紹介する流れは、先に調査を行った上でなるべく精緻なペルソナを先に設定するプロセスになります。

以下のステップでターゲットユーザーの具体的な像を構築します。

【ステップ1】デモグラフィック情報の定義

ターゲットとなるユーザーの基本的な人口統計情報=年齢、性別、職業、教育レベル、居住地域、収入などを定義します。これをデモグラフィック情報と言います。これらの情報は、オンライン調査、既存の市場調査データ、SNS分析などを通じて得ることが多いです。このステップの目的は、広範なユーザーベースから主要なセグメントを切り分けることです。

【ステップ2】サイコグラフィック情報の定義

デモグラフィック情報に基づいたセグメントをさらに深堀りし、個人の興味、価値観、生活スタイル、購買行動、使用するテクノロジーといったサイコグラフィック情報を定義します。このステップの目的は、ユーザーの深層心理や動機付けを理解することです。 ステップ1同様オンライン上の既存の調査データを利用するほか、インタビューを実施することで生の声から導き出すことも多いです。

【ステップ3】データの分析とインサイトの抽出

収集したデモグラフィックとサイコグラフィック情報を分析し、重要なユーザー行動パターンやニーズ、課題を特定します。これにより、類似の特性を持つユーザーグループを同じペルソナに分類し、それぞれのペルソナに独自の特徴や行動を割り当てていきます。

【ステップ4】ペルソナのプロファイル作成

具体的なペルソナの詳細なプロファイルを作成します。各ペルソナには、名前、年齢、職業、背景ストーリー、日常生活のシナリオ、サービスに対する具体的なニーズと課題が含まれ、ステップ3までで整理した内容を「サービスを利用する個人」を想起できるレベルに肉付けを行います。

4. 実際のプロジェクトでペルソナを設定してみる

それでは、具体的に仮想のプロジェクトを想定しながら、実際にペルソナを設定してみます。 今回は仮に「ペット用品のEコマースサイト」を新規に立ち上げる場合を想定します。 最終的にはこのサービスに必要な機能アイデアやコンセプトの定義を行いたいと思いますが、まずはそれらの起点となるペルソナを設定していきます。

【ステップ1】デモグラフィック情報の定義

本サービスのターゲットとなりうる、年齢・性別・職業・地理的位置・教育レベル・家族構成・年収を複数定義してみましょう。 ※実際には前述の通り、オンライン調査・既存の市場調査データ・SNS分析などから導き出しますが、ここでは割愛させていただき、最終的な「仮の」結論を書いています。

(1)年齢

年齢層

  • 20歳から30歳
    • 若いペットオーナー。
    • SNSを活用してペット関連のトレンドに敏感な層。
  • 31歳から45歳
    • 家庭を持ちペットを家族の一員として見ている。
    • ペットの健康に対する支出が多い。
  • 46歳から60歳
    • 子どもが成長し空の巣症候群を経験している年配のペットオーナー。
    • 高品質のペット製品や新しいペット技術に興味がある。

(2)性別

  • 男性
  • 女性
  • 性別に関わらず

(3)職業

  • 若手専門職(20歳から30歳)
    • 例)IT技術者、マーケティングアナリスト、デザイナーなど
      • 新しい技術やトレンドに対する適応性が高い
      • デジタルプラットフォームを活用する能力が高く、ペットの健康管理やオンラインでのペット用品の購入に積極的
  • 中堅専門職または管理職(31歳から45歳)
    • 例)企業の部門マネージャー、エンジニア、教育者など
      • 経済的に安定しており、家族を持つ可能性が高い
      • ペットは家庭の一部と見なされ、ペット用品やサービスに対する投資も積極的
      • 生活の質を重視する傾向から、ペットの健康と幸福に関連する製品やサービスへの関心も高い
  • 自営業者またはリタイア後もアクティブ(46歳から60歳)
    • 例)コンサルタント、小規模事業主、元エグゼクティブなど
      • 余暇を楽しむ時間多い
      • 自由な時間の使い方を重視し、ペットとの時間を価値あるものと見なしている
      • 彼らは経済的にも余裕があり、高品質なペット用品やユニークなペット体験に投資する可能性が高い

(4)地理的位置

  • 都市部居住者
    • ペット関連のサービスや製品へアクセスしやすい
  • 郊外居住者
    • 広いスペースを持つ家庭が多く、大型犬を飼っている可能性が高い

(5)教育レベル

  • 大学卒または専門学校卒
  • 大学院卒

(6)家族構成

  • 単身者
    • ペットを心の支えや生活のパートナーとして重視
  • カップルまたは未就学・小学生を持つ家庭
    • ペットを子供の成長に良い影響を与える存在と見ている
  • 空の巣家庭
    • 子供が独立した後のペットオーナー

(7)年収

  • 300万円から600万円
    • 20歳から30歳 - 若手でキャリア初期の段階
  • 600万円から900万円
    • 31歳から45歳 - 家庭を持ち、キャリアで安定している中堅層
  • 900万円以上
    • 46歳から60歳 - キャリアの高峰期を迎え、財政的に余裕がある

さて、一度これらの情報を表にしてみたいと思います。

グループ 年齢層 性別 主な職業の例 地理的位置 教育レベル 家族構成 年収 (万円)
A 20歳から30歳 男性・女性 IT技術者、マーケティングアナリスト、デザイナー 都市部、郊外 大学卒 単身者、カップル 300万円から600万円
B 31歳から45歳 男性・女性 企業の部門マネージャー、エンジニア、教育者 都市部、郊外 大学卒、大学院卒 カップル、未就学・小学生を持つ家庭 600万円から900万円
C 46歳から60歳 男性・女性 コンサルタント、小規模事業主、元エグゼクティブ 都市部、郊外 大学卒、大学院卒 空の巣家庭 900万円以上

【ステップ2】サイコグラフィック情報の定義

さらに、これらのセグメントをさらに深堀りし、以下のサイコグラフィック情報を定義します。

  • 趣味
  • 価値観
  • 生活スタイル
  • 購買行動
  • 使用するテクノロジー
  • 情報収集の仕方

グループ A (20歳から30歳)

項目 内容
趣味 デジタルゲーム、フィットネス、旅行、ソーシャルメディア
価値観 環境意識が高い、ダイバーシティを重視
生活スタイル アクティブで社交的、都市部でのコンパクトな住まい、ペットと積極的に時間を共有
購買行動 価格対効果を重視し、レビューと比較を念入りに行う
使用するテクノロジー スマートフォン、ウェアラブルデバイス、アプリを活用した生活管理
情報収集の仕方 ソーシャルメディア、インフルエンサーの推薦、オンラインレビュー

グループ B (31歳から45歳)

項目 内容
趣味 ガーデニング、読書、料理、子供とのアクティビティ
価値観 家族中心、キャリアの安定と成長、教育への投資
生活スタイル バランスの取れた家庭と仕事の生活、郊外の住宅、ペットは家族の一員
購買行動 長期的な投資としての購入を好む、品質と信頼性を重視
使用するテクノロジー 家庭用スマートデバイス、オンラインショッピング、健康管理アプリ
情報収集の仕方 専門家のブログや記事、消費者レポート、口コミ

グループ C (46歳から60歳)

項目 内容
趣味 アートと文化、ワインやグルメ、ガーデニング、ゴルフ
価値観 生活の質の向上、健康と長寿、コミュニティへの貢献
生活スタイル 質の高い生活を求める、定年後もアクティブ、ペットを健康的なライフスタイルの一部と見なす
購買行動 高級品への投資が多い、カスタマイズやエクスクルーシブな商品を好む
使用するテクノロジー 高品質の家電製品、セキュリティシステム、先進的な健康技術
情報収集の仕方 信頼できる新聞や雑誌、専門店や展示会、直接的な対人関係

【ステップ3】データの分析と課題・インサイトの抽出

さて、ここまでの整理で、なんとなどんな人をペルソナとして設定すればよいのか見えてきました。さらに詳細な個人を具体化するために、上記のグループそれぞれのニーズや課題を洗い出しつつ、グループごとの特徴をわかりやすい一言で現したいと思います。

グループ A 「デジタルに精通した若年層のペット愛好家」

項目 内容
ニーズ 最新テクノロジーを用いたペットケア製品、ソーシャルメディア統合機能、環境に優しい製品
課題 アクティブな生活とペットケアのバランス、情報過多による選択困難
行動 オンラインでの購入頻度が高く、レビューと比較を重視

グループ B 「家庭みんなでを重視にする中年のペット愛好家」

項目 内容
ニーズ 家族全員で利用できるペット関連製品、教育的価値のあるペットケア情報
課題 家族との時間とペットケアの両立、高品質な製品へのアクセス
行動 長期的な投資としての製品選び、品質と信頼性を重視

グループ C 「ラグジュアリー志向のシニアペットオーナー」

項目 内容
ニーズ 高級ペット製品、カスタマイズ可能なペットサービス、健康管理支援
課題 高品質なサービスへの高い期待とその入手の困難さ
行動 購入においてブランドの評判を重視、カスタマーサービスの質に敏感

【ステップ4】ペルソナのプロファイル作成

それでは、具体的なペルソナの詳細なプロファイルを作成します。 ここまで整理したA・B・Cのそれぞれのグループをもとにした3人のペルソナを設定します。 各ペルソナには、これまでのデモグラフィック情報・サイコグラフィック情報・インサイトを踏まえた上で、以下の具体的な情報を与えます。

  • 名前/年齢/性別/職業/教育レベル/家族構成/年収 (万円)
  • 趣味/価値観/生活スタイル/購買行動/使用するテクノロジー/情報収集の仕方

さらに以下の情報でよりペルソナ像を具体化しましょう。

  • ペットを飼い始めた背景ストーリー
  • ペットと共にする日常生活のシナリオ
  • サービスに対する具体的なニーズと課題

ペルソナA「デジタルに精通した若年層のペット愛好家」山田洋介

項目 内容
名前 山田洋介
年齢 28歳
性別 男性
職業 IT技術者
教育レベル 大学卒業(情報技術)
家族構成 独身
年収 550万円
趣味 デジタルゲーム、ジョギング、ソーシャルメディアを通じた写真共有
価値観 環境保護、技術の進歩、効率性
生活スタイル 都市部のスマートアパートに住み、アクティブで社交的
購買行動 テクノロジー製品に最新のものを好み、オンラインで購入
使用するテクノロジー スマートフォン、スマートウォッチ、ホームオートメーションデバイス
情報収集の仕方 テクノロジーニュースサイト、ソーシャルメディア、ブログ
ペットを飼い始めた背景ストーリー 独立後の一人暮らしで寂しさを感じ、友人のペットの影響を受けて動物保護施設から小型犬を引き取った
ペットと共にする日常生活のシナリオ 朝はスマートウォッチで健康管理をしながら犬とジョギング。仕事から帰宅後はスマートホームデバイスでペットの様子をチェックし、夜はペットとリラックスしながら遊び、週末にはペットの写真をSNSで共有して友人と交流。
サービスに対する具体的なニーズと課題 忙しい日常の中でペットの世話を適切に行うため、ペットの活動量や睡眠を追跡できるウェアラブルデバイスや自動給餌器、遠隔で操作できるペットカメラに関心が高い。使い勝手の良さ、信頼性、環境への配慮を求める。

ペルソナB「家庭みんなでを重視にする中年のペット愛好家」佐藤美智子

項目 内容
名前 佐藤美智子
年齢 39歳
性別 女性
職業 教育者(小学校教師)
教育レベル 大学卒業(教育学)
家族構成 既婚、2人の子供(8歳と5歳)
年収 750万円(家庭合計)
趣味 ガーデニング、読書、料理
価値観 家族の幸福と健康、教育の重要性、コミュニティへの貢献
生活スタイル 郊外の一戸建てに住み、家族との時間を大切にしている。週末は地域の活動に参加。
購買行動 安全で教育的価値のある製品を選ぶ、品質とコストを比較検討
使用するテクノロジー 教育関連アプリ、家庭用スマートデバイス、オンラインショッピング
情報収集の仕方 教育と親子関係のブログ、専門家の記事、教育関連ポッドキャスト
ペットを飼い始めた背景ストーリー 子供たちがペットとのふれあいを通じて責任感を学ぶことを望み、地域のペットシェルターから猫を迎え入れた。
ペットと共にする日常生活のシナリオ 平日は子供たちが学校から帰るとペットの世話をさせている。休日には一緒に庭で遊び、家族全員でペットの健康管理に努める。
サービスに対する具体的なニーズと課題 家族全員が安心して使えるペット関連製品を求めており、特に安全性と教育的な要素が重視される。時間が限られているため、効率的なペットケアソリューションが必要。

グループ C 「ラグジュアリー志向のシニアペットオーナー」木村和也

項目 内容
名前 木村和也
年齢 55歳
性別 男性
職業 元エグゼクティブ、現在はコンサルタント
教育レベル 大学院卒業(経済学)
家族構成 既婚、子供は独立済み
年収 1200万円
趣味 ゴルフ、ワイン収集、海外旅行
価値観 生活の質の向上、健康と長寿、社会への貢献
生活スタイル 高級住宅地に居住、贅沢な生活を楽しみ、コミュニティ活動に積極的
購買行動 高品質とブランド価値を重視、豪華で独自性のある製品を好む
使用するテクノロジー 高級家電、最新の健康技術デバイス、セキュリティシステム
情報収集の仕方 専門家の推奨、高級ブランドのニュースレター、信頼できるメディア
ペットを飼い始めた背景ストーリー 定年退職後の孤独感を埋めるために、妻と相談してペットを迎えることに決めた。高品質なペット生活を求めて、ショー犬のラブラドールレトリバーを選んだ。
ペットと共にする日常生活のシナリオ 毎朝、広い庭で犬と遊んでから地元のカフェで朝食を取る。週に数回はペットと共に高級スパでリラクゼーションの時間を過ごし、健康管理を徹底している。
サービスに対する具体的なニーズと課題 高級感と独自性を兼ね備えたペットケア製品を求めており、ペットの健康と幸福を維持するために高品質な食品や健康サービスを常に探している。ペット製品においてもブランドとデザインを重視し、カスタマイズ可能なサービスを好む。

ここまでがペルソナの設定になります。 ユーザーの代表的な属性や行動パターンを具体的に描き出し、「その人たちが何を望んでいるか、どのように感じているか」を具体的に理解するための第一歩が踏み出せました。

次回は、それぞれのペルソナが実際にどのようにサービスを利用するのか(して欲しいのか)その過程を可視化し、より細かくインサイトを抽出していくカスタマージャーニーの作成に進みたいと思います。