2024年12月、多くのデザイナーに愛されてきたInVisionが、そのサービスに幕を下ろします。
デザインレビューの効率化に大きく貢献し、多くのデザイナーのワークフローを変えてきたツール。そんなInVisionの終了を前に、このツールが私たちにもたらした革新について振り返ってみたいと思います。
※なお、この時期には同様のデザインレビューツールが他にも存在していましたが、本記事ではInVisionを当時の代表的なツールとして取り上げています。
InVision登場以前のデザインレビュー
「この赤丸で囲った部分なんですが...」「すみません、どこのことでしょうか?」といったやり取りは、多くのデザイナーにとって身近な経験だったのではないでしょうか。プリントアウトされた画面に付箋を貼り、赤ペンで指摘箇所を示し、余白にメモを書き込む。これは当時、一般的に行われていた手法の一つでした。
他にも当時、デザインレビューは主に以下のような方法で行われていました:
- 会議室に集まっての対面レビュー
- PowerPointにデザイン画像を貼り付けてのレビュー
- メールでのPDFのやり取り
- 共有サーバーでのファイル管理
特にPowerPointでのレビューは、多くの現場で採用されていた手法でした。画面キャプチャを貼り付け、矢印や円で指摘箇所を示し、赤字でコメントを書き込み、フィードバックを返すという方法です。
しかし、実際にはさまざまな課題がありました。そもそもデザインデータをPowerPointに貼り付けてやり取りするプロセス自体が手間のかかる作業でした。また、バージョン管理の煩雑さ、フィードバックの整理と追跡の困難さなど、作業効率の面で大きな課題を抱えていました。メール、パワーポイント、エクセルのタスクリストなどを行き来する必要があり、多くの時間がこうした作業に費やされていました。
InVisionがもたらした変化
そんな中、InVisionの登場は、デザインレビューのワークフローを大きく変えることになりました。 デザインファイルをアップロードしてURLを共有するだけで、関係者全員がブラウザさえあれば、いつでもどこでもレビューに参加できる。画面上の好きな場所にピンポイントでコメントを残せる。これらの機能により、デザインレビューの課題が一気に解消されていきました。 特に以下の点で、デザインレビューのワークフローは大きく改善されました:
1. 共有とレビューの簡略化
デザインファイルをアップロードし、URLを共有するだけで、誰でもすぐにレビューを始められるようになりました。PowerPointでの画像の貼り付けや、対面でのレビュー設定といった手間から解放されました。
2. コメントの一元管理
画面上の該当箇所に直接コメントを付けられる機能は、特に重宝しました。「どこのことを指しているのか」という無駄なやり取りが激減。しかも、すべてのコメントが一箇所で管理され、検索も可能になりました。
3. バージョン管理の簡素化
新しいバージョンをアップロードするだけで、履歴が自動的に管理される。過去のバージョンとの比較も容易で、デザインの進化を一目で確認できるようになりました。
4. 非同期レビューの実現
デザインレビューがデジタル化されたことで、時間や場所を問わずレビューが可能に。デザイナーは指摘された箇所の修正に集中でき、レビュアーは自分のペースで確認作業を行えるようになり、より効率的なワークフローが実現しました。
デザインツールの進化とInVision
デザイン業界のツールは、常に進化を続けています。特にFigmaの登場は、デザインワークフローに新たな可能性をもたらしました。
デザインの作成から共有、コメント、そしてプロトタイピングまでを1つのツールで完結できるようになったのです。 もはや、デザインファイルをエクスポートして別のツールにアップロードする必要はありません。チームメンバーは常に最新のデザインにアクセスでき、その場で直接フィードバックを残すことができます。デザイナーとレビュアーの距離が、さらに近づいたと言えるでしょう。 InVisionによって効率化されたデザインレビューの形は、より統合的なツールの中で新たな進化を遂げることになりました。
さようなら、そして、ありがとう
PowerPointでのレビューから、InVisionによるデジタル化、そしてFigmaのような統合ツールへ。デザインレビューの形は、時代とともに変化を続けています。InVisionをはじめとするクラウドサービスによるデザインレビューは、画面上での直感的なフィードバックや一元化されたコメント管理を可能にし、これらの機能は現在のデザインツールでさらなる進化を遂げています。
デザインレビューのデジタル化とオンラインでの共同作業は、今や当たり前の働き方となりました。デザインファイルの共有、コメント管理、バージョン管理といった機能は、現代のデザインツールに不可欠な要素として組み込まれています。これらの標準的な機能の多くは、InVisionをはじめとする初期のデザインレビューツールが築いた基盤の上に成り立っています。
InVisionに、感謝を込めて。